Assessment Methodology
AI成熟度診断の方法論
診断の設問、採点式、参照元、使い方、限界を公開します。スコアの高さを競うためではなく、事業目的に必要な能力と統制の差分を見つけるための自己診断です。
- Author
- 中村泰行 / Yasu Nakamura
- Version
- 1.0
- Published
- Assessment
- 無料、全12問、自己申告、証拠確認なしの初期スクリーニング。
Model Design
採点する運用状態と、参照する技術経路を分ける
Capability Path
技術能力は個別に確認する
データ準備、モデル利用、RAG、特化、接地・評価、単一エージェント、マルチエージェントという経路は、アーキテクチャレビューの参照に使います。この自己診断から技術能力レベルは自動判定しません。
Operating Maturity
組織として再現できるか
十二問では、個人依存の試行から、標準化、定量管理、継続的改善へ進めているかを採点します。高度なモデルを使っていても、責任や運用が未整備なら別の弱点として残ります。
Six Dimensions
評価する六つの能力次元
01 / Data Foundation
GenAI MM L0
データ基盤・ガバナンス
AI が消費可能な形にデータを取得・整備・統治できているか。品質、権利・ライセンス、プライバシー、サイロ解消を含む基盤。
- Question AI活用に向けたデータの整備・品質・アクセス性は、どの段階にありますか?
- Question データのガバナンス(権利・ライセンス・プライバシー・サイロ解消)は?
02 / Model & Context
GenAI MM L1–L2
モデル活用・文脈設計
基盤モデルの選定・プロンプト設計・API提供と、社内知識を文脈として注入する仕組み(RAG)の整備度。
- Question 基盤モデルの選定・プロンプト設計・API提供の体制は?
- Question 社内知識を文脈として与える仕組み(RAG等)の整備は?
03 / Tuning & Grounding
GenAI MM L3–L4
特化・接地・評価
ドメイン特化(ファインチューニング)、出力の根拠提示(引用)、精度・バイアス・安全性の評価フレームワーク。
- Question ドメイン特化(ファインチューニング等)の取り組みは?
- Question 出力の根拠提示(引用)と評価(精度・バイアス・安全性)の仕組みは?
04 / Agentic Capability
GenAI MM L5–L6
エージェント実装
自律的にツールを使い多段タスクを遂行する単一エージェント、および複数エージェントの協調・オーケストレーションの実装度。
- Question 自律的にツールを使い多段タスクを遂行するエージェントの実装状況は?
- Question 複数エージェントの協調・オーケストレーションの状況は?
05 / Ops & Reliability
LLMOps / AgentOps
運用・信頼性・セキュリティ
本番運用の監視・ログ・ライフサイクル管理、入力検証・敵対的攻撃対策・ツール利用の安全性・ドリフト管理。
- Question 本番運用の監視・ログ・ライフサイクル管理(LLMOps / AgentOps)は?
- Question セキュリティ(入力検証・敵対的攻撃対策・ツール利用の安全性・ドリフト管理)は?
06 / Governance & Org
Responsible AI
ガバナンス・組織・ROI
責任あるAI(バイアス対策・透明性・説明可能性)、PoCからの本番移行とROI実証、経営・関連部門の合意と変革管理。
- Question 責任あるAI(バイアス対策・透明性・説明可能性・ガバナンス体制)は?
- Question PoCからの本番移行・ROI実証・経営/関連部門の合意・変革管理は?
Answer Scale
各設問は、運用状態を五段階で選ぶ
選択肢は、状態が存在するかだけでなく、再現性、標準化、計測、改善の度合いを表します。実際の診断では各段階に具体例を付け、回答者間の解釈差を減らしています。
- Level 1
- 試行中
- AI活用は場当たり的で、成果は個人の力量に依存します。再現性のある成果を出すための基盤づくりが最優先です。
- Level 2
- 個別管理
- 対象範囲では管理が始まっていますが、共通の標準は未確立です。成功した手順を再利用できる形にすることが次の鍵です。
- Level 3
- 標準化
- 対象範囲で標準プロセスが定義され、再現性が生まれています。次は結果と統制の有効性を計測できる状態へ進みます。
- Level 4
- 計測・統制
- 指標に基づく定量管理が機能しています。結果を分析し、統制と運用を継続的に改善する段階です。
- Level 5
- 適応改善
- 継続的改善が対象範囲の運用に組み込まれ、変化に応じて標準・指標・統制を更新できる段階です。
Scoring
三つの指標の計算方法
Dimension Score
能力次元スコア
各次元に属する二つの回答値を平均し、小数第一位へ丸めます。範囲は1.0から5.0です。
Coverage Index
能力・運用カバレッジ指数
六つの次元スコアの平均を1.0から5.0の範囲で0から100へ線形変換し、整数へ丸めます。回答項目全体の充足度を要約する値であり、導入準備の完了、安全性、ROIを示す指数ではありません。
Index = round(((six-dimension mean - 1) / 4) × 100)
Process Maturity
プロセス成熟度
まず、六つの次元のうち最も低いスコアの整数部分を求めます。次に、データガバナンス、接地・評価、運用監視、セキュリティ、責任あるAIの五設問を重要統制ゲートとして確認し、最も低い回答値を求めます。二つのうち低い値を採用し、1から5に収めます。
Stage = min(floor(min dimension score), min critical-control answer)
Reference Capability Path
GenAI能力経路は、採点結果から自動判定しない
技術能力の「未実装」と、用途に不要だと証拠に基づいて判断した「不採用」は異なります。同じ五段階の回答値から両者を区別できないため、現在の診断はLevel 0〜6を算出しません。下表は個別レビューで実装能力と前提関係を確認するための参照経路です。
Reference 0
データ準備(基盤)
AIが消費できる形にデータを整備・統治する段階。
Reference 1
モデル選定・プロンプト/提供
基盤モデルを選定し、プロンプト設計とAPI提供で基本タスクを実行。
Reference 2
文脈強化(RAG)
外部知識を動的に取得し、回答の正確性と関連性を高める。
Reference 3
特化のためのチューニング
ドメインデータでモデルを特化し、専門的な役割に適合させる。
Reference 4
接地と評価
出力を根拠に接地し、精度・公平性・安全性を継続評価する。
Reference 5
単一エージェント
計画・ツール利用・自律遂行する単一エージェントを運用する。
Reference 6
マルチエージェント
複数の専門エージェントが協調し、複雑な課題を解く先端段階。
個別レビューでは、各技術の適用要否、実装状態、評価証拠、運用統制を別々に確認します。高い番号を目標にするのではなく、対象用途に必要な能力だけを選びます。
Interpretation
目的適合の目標状態を、検証する仮説として置く
1. 事業目的を先に置く
自動化したい判断、守るべき人・資産、許容できる損失を定義し、その目的に必要な次元だけ目標を引き上げます。
2. 回答を証拠へ変える
方針文書、設定、テスト結果、ログ、承認記録で回答を確認します。自己申告と証拠が異なる場合は、証拠に合わせて現状を修正します。
3. 最弱次元をそのまま優先順位にしない
最弱次元は改善候補です。実際の優先順位は、事故影響、事業価値、依存関係、実装コストを加えて決めます。
Limitations
この診断で分からないこと
- 01 回答の正しさや、統制が実際に機能しているかは検証しません。
- 02 業界、用途、法域ごとの法令・規制・契約への適合性は判定しません。
- 03 他社平均や業界ベンチマークとの比較ではありません。
- 04 高得点が、ROI、事故の不存在、モデル品質、認証取得を保証するものではありません。
- 05 十二問のため、個別システムの脅威分析、影響評価、アーキテクチャレビューを代替しません。
- 06 六次元は均等重みで、判定閾値は外部ベンチマークで校正していない独自設定です。
- 07 技術能力レベルや、ある技術を採用すべきかどうかは判定しません。
References
参照資料と位置づけ
Ali Arsanjani / Juan Pablo Bustos, Packt Publishing, 2026, ISBN 9781806029570
データ準備からマルチエージェントへ進むGenAI Maturity Modelの能力経路
CMMI Institute, 2026
目的、成果、データ、セキュリティ、説明責任を組織能力として扱う観点
生成AIリスクをGovern、Map、Measure、Manageで扱う観点
AIマネジメントシステムと継続的改善の観点
MITRE
AIシステムに対する攻撃手法と緩和策を脅威モデルへ反映する観点
上記は設問設計の参照観点です。本診断は各資料の公式なクロスウォーク、認証、アプレイザルではありません。名称と権利は各組織に帰属します。
- Version 1.0
- 2026年7月19日。方法論を初公開。独自自己診断であること、重要統制ゲート、技術能力経路を自動判定しない理由、同点時の扱い、限界を明文化。